創作 破滅の望(仮)

一次創作「破滅の望(仮称)」のまとめ。※グロ描写、多少の工口描写を含みます。

破滅の望 11話

「俺が小学校高学年ぐらいの頃だったな。成績優秀スポーツ万能、周りの大人に好かれてて子供…同級生にも人気ある。そんな奴に虐められてた。俺がいくら平均より運動出来たとはいえ、ちゃーんと体育教室とやらに習いに行ってるよーな奴らには勝てなかった。んで勉強に関しては酷ぇぐらいボロッボロだったから、アイツからしたら格好の指摘点だったんだろーな。転機はあの1日だった。
俺は虐めだと思ってたしアイツも悪意ありそーだが周りはイジりだと思ってる、家が近いってだけの理由でそんな会話しながら通学路歩いてた。途中で一緒に公園行こうって誘われた。ほんとは寄り道禁止だから他の奴らは撒いて2人だけで公園…まぁ山みてーなとこに行った。そこでアイツは
「君はさ、僕の事まさか友達だなんて思ってないよね。都合いいから一緒に居るだけ。友達だなんて誤解されてたら気持ち悪いから言ったけど、周りにチクったら…どうなるか分かってるよね。」的な事言ってきたんだ。そこで俺は思ったんだよ、今コイツ殺しても直ぐはバレねーんじゃねーかな ってな。ちょうどその日図工の授業でカッター壊して先生に直してもらってて、帰りに受け取ってポケットに入れっぱだった。山から降りようとしたアイツの足引っ掛けて転ばせた後、首周りを突き刺した。その後仰向けにしてアイツの体中恨みのままにメッタ刺しにした。変な角度で刺してたから返り血はそんな浴びなかったな。」
うちの学校にも居たな、そんな子。それにターゲットにされて…。これが伊吹の初めての殺人なのかな。聞くつもり無かった話まで聞けてラッキー…なのかな?そういえば凶器はどうしたんだろう。見つかったらすぐバレる気がする。
「カッターは…どうしたの?」
「カッター?次の日ゴミの日だったから新聞包んで捨てた。親にはポケット突っ込んで持って帰ってたら知らねー間に失くしたって言った。いま考えたらなんでこれでバレねーんだよ…。」
確かに何でこれでバレなかったんだろう。遺体自体その日の内に見つからなかったのかもしれない。連続殺人鬼…シリアルキラーは人殺す前に動物虐待とかしてる率高いって聞いたけど、伊吹はどうなんだろうか。調べた限りそんな情報は出てこなかったが、もしかしたらやってたけど出回ってないだけかもしれない。
「伊吹は…その…動物とか…故意に傷つけた事ってある…?」
「あー、動物虐待?殺人鬼って火遊び、おねしょ、動物虐待 多いって言ったりすんもんな〜、なんだっけ、名前忘れた。俺はどれも無かったな。いや、火遊びはやった事あるけど…やんちゃな子だったら結構やんじゃねーの?」
確か名前はマクドナルドの3兆項…だったっけ。動物虐待やおねしょは無かったけど私も火遊びだけはやった事がある。手の力がついてライター付けれるようになってから楽しくて色々やってた。要らなくなったチラシとか返却された宿題とかに火付けて、お父さんに見つかって凄い怒られたりしたな。
「私も…火遊びはしたことある。えへへ…お揃いだね…!伊吹は動物好きなの?」
「俺が?んー…そんな好きでも嫌いでもねーな、ただ殺したくなんないだけ。ついさっきまで饒舌に喋ってた人間が声にならない声しか出せなくなったり息絶えたりすんのがゾクゾクして気持ちいーんだよ。」
なるほど…。人を殺して快楽を得る原理が分かってちょっとスッキリした。でも自分がその感覚を理解出来るかと言えばまた別。
「はははッ!訳分かんねーだろ?まぁずっと分かんねーのが1番なんだろーけどさ!菜白は俺みたいになるんじゃねーぞっ!」
伊吹はそう言いながら、隣に座り直した私の頭をわしゃわしゃと撫でる。とても人殺しには見えない、少年のような笑顔をしていた。でもどこか寂しそうだ。どうしたら伊吹を満たしてあげれるだろう。少し考えたあと、伊吹の頭を撫でてみた。身長差もそんなに無いから簡単に手が届く。私の手が届きやすいようにか、ちょっとだけ体を丸めてくれた。
「なんか落ち着くなぁ。…もーちょっとだけ、やめねーでくれっか?」
もちろん!伊吹が喜んでくれるなら、いつまででも撫で続けるよ。伊吹がもうちょっとって言ってから10分弱ぐらいたった頃、1つ疑問が浮かんだ。私は伊吹とずっと一緒に居たいけど、仕事によっては明日から朝から夕方まで1人で留守番かもしれない。
「そういえば伊吹のお仕事ってなに?」
明日から1人かも ってのがどうしても不安過ぎて聞いてみた。
「俺の仕事?んー…なんつったらいーんだろーな。まー家のパソコンでやる仕事だから留守番にはなんねーぞ。」
よかった、1人にはならないみたいだ。それさえ分かればぶっちゃけ業種は何だっていい。それにしてもあの質問から私が、留守番が不安なのを見抜くなんてやっぱり普通の人じゃない。これもまた殺人鬼の勘ってやつなのだろうか?いつの間にか伊吹を撫でてない事を思い出してふと振り返ると、伊吹に抱きしめられる形になっている事に気づいた。ずーっとこうしてたいぐらい、大好きな温もり。私今幸せだなぁなんて思っていたら、BGM代わりに付けていたテレビから聞き覚えのある声がした。

破滅の望 10話

「おはよー!いぶき…?!」
時刻は7時30分、夜更かししたせいかいつもより寝すぎてしまった。そういえばこれから学校はどうなるのだろうか?それより私は隣に伊吹の姿が無い事の方が気になっていた。今日は伊吹の仕事は休みのはずなのにこんな早く起きてるのかな。もしかしたらもうリビングにいるのかもしれない、そう思ってリビングに向かった。
「おぉ、おはよ。菜白。お前寝ぼけ顔かわいーな」
「おはよ、伊吹!寝ぼけてなかったら可愛くない?」
よかった、ここに居た。部屋にはパンの焼けたいい匂いが立ち込めている。安心してちょっと意地悪な質問をしてしまった。そういえば伊吹は人殺しに行った時のままの服で寝ていたはずだけど、もう着替えていた。あと今になってトイレに行ってる可能性もあった事に気づいたが、今更どうでもいい。
「っははは!寝ぼけてなくてもかわいーに決まってんだろ?お前が大好きなDesire様の大事な人なんだ、もっと自信持っていーんだぞ!」
朝から恥ずかしい思いをしてしまった。言い終わった伊吹も頬を赤く染めている。こんなに相手に可愛い可愛いとか言ってる人が夜中に人殺して食べる為に解体してるなんて嘘のようだ。
「あー、菜白!朝飯出来てんぞ。ほんとはお前も起きた後に作ろーと思ってたんだけどな…待たせてもわりーと思って先作ってたんだよ。心配させてたんならごめんな?」
なんで置いて行ったのとか言おうかと思ったが、私の為に朝ごはんを作ってくれる為だったなんて聞いてからそんな事言える程鬼畜ではない。何か自分に出来る事が無いかと考えている内に、伊吹が作ってくれた朝ごはんが机に並んでいた。トースト、サラダ、ハンバーグ。昨日帰りに買っていたコーヒー牛乳もある。ハンバーグの肉の正体は聞かないのが吉だろう。
「いやー、久しぶりに朝からこんなん作ったな。基本1人じゃ自分の為にしか作らねーからさ?…まぁ自炊しねー人も多いだろーけど俺は食材が…な。」
確かに余程料理が好きでも無い限り、一人暮らしで朝からこんなに豪華に作らないと思う。食材が特殊でもなかったら…。
「いただきまーす!」
どれから食べようか?やっぱりサラダだと思うけどハンバーグも冷めちゃう前に食べたい。悩んだ末結局食べたい時に食べたい物を食べる頭使わない方法に辿り着いた。結局これが1番かもしれない。いつも通りのペースで食べていると、気づいたら伊吹は食べ終わっていた。アイスといい今といい、ちゃんと噛んで食べてなさそうな勢いだ。待たせては悪い、そう思ってペースを上げていると、それに気づかれたのだろうか。
「焦んなくていーぞ、ゆっくり食いな。」
穏やかな笑顔でそう言われた。ほんとに伊吹は勘が鋭いってレベルじゃない気がする。
「ご馳走様でした!」
食べ終わったが…結局あれから20分ぐらいかかってしまった。皿洗いはやろうかと思っていたが、私が食べている間にほとんど終わっていた。せめて自分の分だけでもやらないとな…あっ。食べ終わったお皿とカトラリーが回収されてしまった。ここからどのタイミングで自分で洗うよって言おうか。
「あの…伊吹!お皿洗うよ…?」
「んー?ッはは!もうほぼ終わってっから今はいーぞ。どーしてもって言うなら…昼飯の時やってくれっか?」
わかった、と返事をしてソファに戻った。ぼんやりと朝のニュース番組を見ていると、お皿を洗い終えた伊吹が隣に座り、肩を抱き寄せてきた。暖かい…落ち着く…伊吹に体重を少しだけかけたその時、伊吹に引き倒されてしまった。膝枕されて、じーっと見下ろされている。
「伊吹…今日学校どうしよう…。」
時計は8時15分、いつもなら学校についてなきゃいけない時間だ。それに今日は平日、休む連絡の手段もない。
「学校?行きてーのか?見てる限り学校も大分辛そーだが…」
「でも!…」
行かなきゃいけない。辛くても逃げちゃいけない。学校は行くのが当たり前。
「行くな、俺の…Desireからの命令だ。菜白の事を思って〜とかめんどくせー事言うつもりはねーよ。無理矢理行こーとしよーもんなら縛り付けて監禁してでも止める。…分かったか?」
今まで柔らかかった伊吹の表情が突然恐ろしい…人間を襲う捕食者のような顔へと変貌した。光の無い目で私をじっと捉えて離さない。体が震えて言い返す事も出来ない…。伊吹に今まで襲われた人達もこんな感覚だったんだろうか?でも伊吹は人を殺す時は欲情しているはず。
「はははッ!怖かったか?ごめんな。でも俺はあーしてでも菜白にしんどい学校行かねーでほしーんだよ。菜白にだけは…これ以上辛ぇ思いして欲しくねーのもあるけどな。」
そう言いながらぎゅーっと抱き締めてくれた。優しくて暖かい、大好きな人の手…恥ずかしくて伊吹には絶対言えないや。私にだけは?伊吹も学校で何かあったのかな。
「伊吹は…学校、辛かったの?」
「あぁ。昔俺も虐められててな…」
俺も って、私が虐められてて辛いのはバレてしまったみたいだ。
「だーいぶ長くなるけど…聞くか?」
聞きたいと答えると、伊吹はゆっくりと話し始めた。

破滅の望 9話

「ただいま、菜白…!?」
玄関には床で眠る菜白の姿があった。涙の後がついている。出かける前とまるで違う、苦しそうな顔をしてる。なんでだろーか、菜白も人間のはず…人が苦しんでるのに興奮しねぇなんて…。
「う…いぶき…かえって…きて…?うぅぅっ…!!あいたかったよぅ…?」
死体運ぶ時みてーに持ち上げてみたら、どんだけ不安だったんだよってレベルで泣きながらしがみついてきた。会いたかったって…俺1時間も出かけてねーぞ?
「玄関のね…?ドアの音で起きてね…?机に手紙置いてあってね…?寂しかったんだよ…?」
ごめん…ごめん…菜白…!もうぜってー手紙だけで出かけたりしねーから!頼む…許してくれ…。
「また泣いちゃった…ごめんね。重たい事も言っちゃったし…どうか…どうか…嫌いにならないで…。もし伊吹が私の事嫌いになっても…私は伊吹のことだーいすきだよ…!」
「お前なぁ!!嫌いになんてなる訳ねーだろ?!菜白は…俺が初めて護りたいと思った…大事な人だ…。」
あああああ言っちまった!大事な人とか!ヤベぇ…死ぬほど恥ずかしい…。目ぇ逸らそーとしても菜白は、伊吹は菜白の事すき?とでも言いたそうな顔でこっち見てる…。
「俺も…菜白のこと…大事だし大好きだぞ…!」
さっきまで人殺してたとは到底思えねぇこと言ったな。てか早くこれ冷やさなきゃ腐っちまうな…。そんな事をぼんやり考えてたらいつの間にか菜白がクーラーボックスを開けようとしていた。
「ふぁ!?これ…今殺してきたの…?私今殺したてほやほやの人に抱き締められてたの…?」
もっちろん今殺ってきたんだよなぁ…。殺したてほやほやの人って言い方じゃ殺された側じゃねーのか?なんてのは考えるだけ無駄か。
「これ…このまま冷蔵庫でいい?」
「あ…いや…内臓はチルド室…。胴体は冷蔵、足とか腕は冷凍かな…。脳みそは今から食うつもりだからそのままで…」
菜白がさも当たり前みてーに人肉運ぼうとしだしたからビビった。コイツ今いくつなんだ?下手したら小学生だろ…?そんなちっせぇ子が殺人鬼崇拝してその手伝いして…ヤベーな、俺が言えた事じゃねーけど。俺は上着を脱ぎながら聞いた。
「なぁ、お前そーいや今何年なんだ?5年とか?」
「1年生だよ〜…中学校のね!小学生じゃないよ!?」
こんなちっちゃくて可愛い中学生居るんだな、抱きしめてもふわっふわだし。俺が今まで命乞いする中学生ぐらいしかちゃんと見た事ねぇのもあるだろーが菜白は特別なんだろーなぁ…かわいい…護ってやりてぇ…今人肉運びながら喋ってるけど。
「そういえば伊吹さっき脳みそ今から食べるって言ってたけど脳みそ食べるのって危ないんじゃなかった?確か致死率とかすっごい高い病気に…」
菜白がクールー病知ってたとは…でもまあ俺みてーなカニバリストについて調べてたりしたらやっぱり気になるのか?
「そーだなぁ。でも菜白?俺を…お前が大好きな殺人鬼を…DesireCatastropheをなんだと思ってる?電気椅子を…あの…何回生き延びたんだっけ?」
肝心な所を忘れてしまった。確か7、8回は生き延びた気がする。
「そっか、Desire様すっごいタフだもんね!あと生き延びたの14回だよ」
マジでコイツ何者なんだよ、俺について何でも知ってやがる。秋斗からでも仕入れたのか?
「伊吹〜!お腹すいたぁ……作るのは出来るけどどれ使っていい…?」
一瞬作って欲しそうな顔してた。そーだよな、たまには人が作ったあったけぇ飯食いてーよな。
「んー?じゃあ…さっき菜白が運んでくれたアレ…使うかぁ!作んのも俺がやるぞ!テキトーにテレビでも見ながら待ってろ?気になるなら見ててもいーがな!」
俺は普段カップ麺ばっか食ってるような状態、普通の飯作んのは確実に菜白のが上手いだろーな。でも人肉の処理っつったら俺のが上…かもしんねー。
「あの…えと…私…ほんとに何もしなくていいの?あと伊吹明日お仕事あるんじゃ…」
「あぁ!ゆーっくり休みな!俺明日休みなんだよな〜…もう今日だけど」
俺の仕事の心配までしてくれるとか…いい子過ぎんだろ…これで家で厄介者扱いって何なんだよ…!
「なぁ、菜白!お前アレルギーとかってあるか?アレルギー以外も…苦手なヤツとか…」
「無いよ〜!ほんとに作ってくれるんだ…どきどきする…」
俺が今から作る飯がコイツの初めての食人になるんだ、そう考えたらすっげー緊張する。折角なんだから美味いの食わしてやりてーなぁ…。料理用に使っている包丁を取りだし、かなり大きめの肉塊を食べやすいサイズに切り分ける。口の中いっぱいに頬張るのがそれはそれは美味いんだ。結構しっかり火ぃ通して、味付けはすげー軽く塩コショウだけ。結局後でステーキソースとかかけるしちゃんとやらなくてもそんな問題は無ぇ。菜白は落ち着かないのか特に意味も無くウロウロ歩き回ってる。それにしても可愛いな…菜白…!
「伊吹も食べる…よね?一緒にご飯食べるの…楽しみだな〜っ!」
キラキラって目ぇ輝かせてそー言った。なんかお泊まり会に誘われた子供みてーだ。
「っははは!ふつーの飯食うよーな子供同士のかわいー遊びじゃねーがな!お前は今から共犯者になるんだよ…」
「もう既に共犯者なんじゃないかな。遅くても、死体運んだ辺りから…」
確かに。なんつー名前で捕まんのかは知らねーけど多分あの時点でアウトだ。まぁ俺は菜白をアイツらに渡すみてーな馬鹿な事ぁしねーから関係ないが。そうこうしている内に料理は完成した。クソ…ソース入れる小皿用意するの忘れてたな。
「伊吹〜!わぁ…それ…すごい…!あと小皿、要るでしょ?」
「はははッ、すげーだろ?なんてったって俺の特別製だからな!あと、…あ!」
小皿用意してくれたのか!なんて気ぃ利く奴なんだ…!洗い物増えんのめんどくせーからフライパンのまま、ソースだけ小皿に入れてテーブルに運ぶ。普段は1人ですげー悪い姿勢で座ってる2人がけソファに、菜白が先に座ってたから久しぶりにまともな姿勢で座った。
「わぁ…ステーキ…美味しそー!いっただきまーす!」
よく原材料知ってて美味そーって言えるな、コイツほんとに人食った事ねーのか?あと菜白ほんと礼儀いいな。そー思いながら俺も食べ始めた。味は中々上出来、気になる事なんて強いて言やぁちょっと火ぃ通しすぎて気持ち固いことぐらいだな。菜白も俺も結構なペースで食べっから、すぐ完食しちまった。でもまぁこれから寝るし…これぐらいがちょーどいいのか?
「ご馳走様でした。すっごい美味しかった!…また作ってくれる?」
もっっちろん!!…って、人肉食ハマってんじゃねーか。もっと美味く作れる時もある、それも食わせてーな。
「んみみ…もうそろそろ眠たくなってきちゃったな。今度こそ、1人にしない?」
「あぁ、さっきは悪かった。んー…どーする?今度食料調達行く時ついてくるか?」
菜白を1人で置いて行くのももう出来ねー、かといって人殺りに行くの辞めんのも無理だ。俺が食いてーのと食費削りてーのに加えてリクエストまで貰っちまったからな。…脳みそがそろそろ食べ頃だろう、首から上をまるごと突っ込んだ袋を開けた。人間の血の匂いが立ち込めている。
「いぶき…?これ何のにお…い……!?」
流石に頭そのまんまは怖かったか?菜白は酷く怯えた表情で後退りした。怖がってる…かわいい…。その時俺はさっき興奮しなかったのが 菜白だから じゃなくて 寂しがっていたから な事に気付いた。怯えてんの…命乞いするよーな顔してたらかなり興奮する。もっと…悲鳴とか聞きたい…!さっき殺したとこなのにもう欲溜まってきた。菜白殺しちまわないように必死で自制している。とりあえず食欲でかき消して誤魔化すことにした。机の上にブルーシートを敷いて、キッチンの引き出しに入れてあるハンマーで頭蓋骨をかち割った、柔らかそーな脳みそから血が溢れてるのがわかる。美味そーだ。髪は血塗れにならないようにテキトーに結んで、そのまま俺は脳みそを食らい始めた。理由は分かんねーが脳とか内臓食ってると凄ぇ気持ちよくなっちまう、理由は分かんねーが変態以外の何者でも無ぇな、これ。菜白にはぜってー見せらんねー…そーいや菜白どこ行った?なんか俺の部屋から気配するが。…一応食べ終わって処理もした、もう菜白は寝てるかもな。
「いぶき〜、きて…。」
やっぱりここに居たか。菜白は柔らかい笑顔で両手広げてる、また俺に抱き締められたいんだろーか?あまりにも無防備な姿の…か弱い菜白に襲いかかりたくなる自分を全力で押さえつけて、そのまま寝る事にした。今度こそおやすみ、菜白。俺の欲なんて知ったこっちゃ無ぇよーな幼い寝顔で俺にしがみついてくる菜白の頭を撫で、俺もそのまま眠りに落ちた。

破滅の望 8話

何となーく今日のエモノを探してると、いかにも遊んでそーなカンジの女が1人でフラフラしていた。そこまで美味そーでは無ぇが、こいつなら殺れる。そう思って周りに誰も居ない事を確認して、後ろから近付いた。
「え?なに?アタシになんか用?てかモサっとした男がなんかデッカいハコ持ってココ1人で居るとか〜マジウケるわァっ!」
なんかすげー腹立つのと死ぬ程酒臭ぇのを我慢しながら俺はこう言った。
「お姉さん、1人ですよね?よければもうちょっと人居そうで安全な所まで案内しましょうか?」
「エェー?マジ?アンタなんかエロい事考えてなさそぉだしぃ…イイよ、連れてって?」
ふん、偉そうな口聞く割にはカンタンに釣れたな。今からお前が行く所は安全な所じゃなく俺の胃の中なんだよなぁ。女はひとつも返事しなくてもペラペラ喋り続けてる。そのまま大体の明かりが消えた周りよりもっと暗い路地裏…菜白と会った所に連れ込んだ。実は俺が菜白と会った時はエモノを待ち伏せしていた所だった。
「でさぁ?コレアタシの彼ピッピなんだけどさァ?マジイケてない??サイキョーなんだけどぉ」
んな事知るか。彼女を1人でこんな時間のこんなトコに放置する男のどこが最強なんだよ。そんなしょーもない事考えながら俺は包丁を取り出す。
「エ?アンタそれなに?まさかアタシ脅す気?ムリでしょ!ウケ」
黙れ。たったの数日分の飯の分際で言葉使って俺と対等に喋ろーとすんな。そー思いながら俺は女の左右の目の間を殴り、スキをついて鳩尾に包丁を突き刺した。包丁抜くとまぁまぁな勢いで血が溢れてきて上着にかかって、性欲がすげー溜まってく感じがした。
「フーッ…フーッ…♡」
自分でもエグいぐらい息荒くなってんのが分かる。鳩尾刺されて余程痛ぇんだろう、その場でのたうち回ってる。動けば動く程出血増えて早く死ぬのに。
「ア゙ッ゙!ア゙ア゙ッ゙!ヴッ…ア゙ァ゙!!」
悲鳴みてーな呻き声を上げてる。このまま眺めてるのもゾクゾクして好きだけど声でバレても困るから若干勿体無いような気もするけど頸動脈を切りつけてトドメを刺した。
「はぁ…はぁッ…人…殺っ…て…ッ…♡」
女が死んだの確認すると同時に、俺は絶頂に達した。
死んだ女の体をバラしては袋に詰め、それをクーラーボックスにねじ込む作業を繰り返す。その間にも何回も何回も気持ち良くなって、解体終わる頃には腰抜けて立て無くなってた。少し休んでから、家に向かって歩き出した。菜白は寝てんだろーか?トイレとかに起きて俺が居ねぇのに気づいてんだろーか?心配させてたら申し訳ねぇな、そー思いながら足早に家に向かった。

破滅の望 7話

完全に寝た菜白をベッドの真ん中に動かして俺は出かける準備を始めた。菜白を家に置いてくのはちょっと不安だがまぁアイツの事だ、逃げ出そうとはしないだろう。捨ててもいいようなヨレた服を着て、何かかかってもすぐに落とせるツルツル素材の上着を羽織った。コイツぁ防犯カラーボールも効かねぇスグレモノ。今は上着なんて着ちゃあクソ程あちーが殺ったのがバレるよりマシだ。脅す用の拳銃とナイフ、刃物研ぎ、それと使い慣れた包丁をポケットに突っ込んだ。棚からクーラーボックスを取り出し、チャック付きの袋が足りてる事を確認した。もし菜白起きても焦らねぇよーに置き手紙でも置いてってやろーか。「ちょっと出かけてる。すぐ帰るから焦んな。危ねぇから俺が帰ってくるまで外出んじゃねーぞ?」って書いた紙を机の上に置いた。
何の夢見てんだろーか、すぅすぅと小さな寝息を立てて幸せそうな顔で寝てるかわいー菜白を撫でてみた。反応は無ぇけどそれでいい、若干寂しいとか思っちまった自分に驚いた。
「行ってくるな、菜白。」
小さくそう言って俺はあの繁華街に向かった。

破滅の望 6話

「菜白〜!お前バニラ味のアイスって食うか?」
「食べるよ〜!…貰っていいの?」
数分冷蔵庫を物色していたが、最終的に冷凍庫に入っていたアイスに決めたようだ。
「俺チョコだけでいーんだけどさぁ…大箱限定なんだよなー…」
確かにこのアイスのチョコ味単品って見た事がない、人気の味をファミリーパック限定にする戦略なのだろうか。そういえば私はこの後どうなるんだろう、このまま何事も無く寝るのだろうか。
「ん〜?早く食わねぇと溶けちまうぞ?」
「あっ!い、いただきます!!」
その頃もう伊吹はほとんど食べ終わっていたので、私も慌てて口の中に放り込んだ。今少しでも喋ろうとしたらむせてしまいそうだ。
「そういや俺ん家、客用の布団とか無ぇなー…」
解決策なら直ぐに思いついたが 一緒に寝たい、なんて簡単に言えることではない。
「んー?一緒に寝っか!なーんつって。ふつーに考えたらやだよなぁ、こんな頭イカれたカニバ男と一緒に寝るとか…」
すぐに反論したいが生憎口の中をアイスに占拠されてしまっていて話すことが出来ない。急いでアイスを無理矢理飲み込むと頭が少しキーンとした。
「嫌じゃないよ!?私は元々伊吹の事…だ、だぁーい好きだったしっ…!!!…うぅ…恥ずかしい…」
うわあああ!言ってしまった!!恥ずかしい!忘れて!忘れて!!…そんな思いも虚しく
「そーっかぁー!菜白はそーんなに俺の事好きなんだなぁ!!はははっ!添い寝するか!」
伊吹はわしゃわしゃと私のまだ少し濡れた頭を豪快に撫でる。私はすかさず濡れたであろう伊吹の手を拭いた。
「あぁ、ありがとーな。んで添い寝…ほんとにいーのか?食われちまうかもしんねーんだぞ?」
「えへへ、いいよ。…どっちの意味でも」
一緒に寝る、ってそういう事だろう、問題は伊吹は添い寝とかじゃ全くたたない事だ。
「いやまぁカニバ問題は家来た時点でアウトみてぇなもんだけどさ…せーてきな意味での方は…その…」
1日に2度も現実を突きつけるのは流石に酷だろう。だから黙ってる。申し訳なさそうな顔をする伊吹にそっと視線を送る、分かっているよ と。…こっちの方が残酷かもしれない。その場で棒立ちのままどっちの方がよかったのか考えていると、寝室…と思しき部屋から声が聞こえた。
「さぁ!菜白〜!寝るぞー!」
部屋に向かうとベッドに寝転がった伊吹が掛け布団を持ち上げて私が入るスペースを用意してくれていた。さぁ来い、と言わんばかりの表情でこっちを見ている。ゆっくりと布団に入ると伊吹が私を抱き締め、優しく背中を撫で始めた。
「かわいいなぁ…菜白…俺に会おうって思ってくれてありがとーなぁ…」
満足気な声でそう話した。いつの間にか腕枕されている。目を合わせるのが恥ずかしくなって、少し布団に潜った。するとなんとおでこにキスをしてきたのだ!
「わっ!?なっ、なに…?!」
「ッははは!可愛いしいー匂いだなぁーって。つい、なっ。」
石鹸の匂いだろうか、子供の匂い ってやつなのか?それとも…美味しそうって事なのかもしれない。でもそれより私は伊吹が全く私を食べたそうな素振りを見せない事の方が気になっていた。自分の信者なんて、食料にするにはうってつけだろうに。まだ人肉は残っているから要らないのか、非常食にでもする気なのか。あまりにも気になり過ぎたので聞いてみる事にした。
「ねぇ、伊吹?…その…んぐぅ!?」
突然キスで口を塞がれてしまった。でも5秒も続かないで終わった。質問を防ぐ事だけが目的だったのだろうか?酷く恥ずかしそうな顔をしている。
「はーっ…ごめん…な…?せーてきなもん何もしねーと思ってた男に無理矢理ちゅーされるとか…嫌だっただろーに…」
全く嫌じゃなかったしむしろ嬉しかった。大好きな人とキス出来る…しかも大好きな人からしてもらえるなんて夢のようだから…。Desire様とならなんだってしたいのだ。
「ねぇ伊吹?よければ…その…そういうこと…したい…な…って…」
「あー…本番?今はゴムねーからダメ…だな。ほんとにしてーなら今度一緒に買いに行こーな。」
どうやら避妊してくれるらしい、かなり意外だ。…でも女性経験等が全く無く学校で言われた避妊しましょうをちゃんと守っていると考えたらおかしくは無い。じゃあなんで人殺すのかって話だがそこに触れるのは野暮ってものだろう。
「今から買いに行ってもいーけど…お前もう疲れてんだろ?コンビニでもそこそこ距離あるしな…。」
そっか、この辺りは治安も悪い。こんな時間に外に何か買い物に行くのは得策では無いだろう。そろそろ眠くなってきたので寝ることにした。今日…いや、昨日は色々あったなぁ。時刻は0時30分を指していた。
「おやすみ、いぶき……。すぅ…すぅ…」
「ん?もう寝るのか…?もうちょっと起きて俺と…って菜白?菜白ー!?チッ…寝んのはえーなおい…明日コイツ何時に起きっか分かんねーな。まぁいっか。おやすみ、菜白。」

破滅の望 5話

色んなお店が閉まり、来た時より落ち着いた雰囲気になっている。ネオンの眩しさは無くなったが、街灯もそれなりにあるので真っ暗ではない。
「そーいや菜白はさ?なんで俺に会おうと思ったんだ?」
思い出したかのように聞いてきた。色んな理由が積み重なって家出を決心したから、なんでと聞かれても簡単な言葉に表せない。伊吹も何となく察してくれたのか、それ以上追求してこなかった。
「…そのキャリーケース…着替えとか入ってんのか?」
なんで急に思い出したんだろう、と思っていたら錆びたブティックの看板がふと視界に入る。これを見て思い出したのかな。
「他の服、パジャマ、髪留め…だいたい入ってる」
「そっか、じゃー良かった!こんな時間店大体閉まってっからな〜。お前のサイズじゃコンビニにも売ってねぇだろーし。」
私の着替えの確認なんて、この後お風呂にも入れて貰えるのだろうか。流石に申し訳ない…
「伊吹は…何か買って行かなきゃいけないものとかある?」
「俺のは特に無いな…あっ!菜白!歯ブラシ持って来たか!?」
そこで私は歯ブラシ以外にも櫛等の水周りセットを1式忘れてきた事に気がついた。さっき大体入ってるって言っちゃったし、なんて言おう…。
「あー…お前その顔…忘れて来たんだな。おぉー、薬局発見!買いに行くぞ!」
他にも沢山忘れ物をした事に気がついた。…お金もそんなに持って来ていない。足りるだろうか。

閉店間際の音楽が流れる店内、伊吹はおもむろに持ち歩き用歯磨きセットを手に取った。女性向けの先の小さいコンパクトタイプの歯ブラシが入ったセット、ケースの蓋部分をコップとしても使える優れ物だ。
「菜白、ミント系の歯磨き粉って使えるか?」
「使えるよ!」
使える…というか、他の歯磨き粉を使ったことが無い。物心着いた頃にはもう大人用のミントのものだった。レジ前にコーヒー牛乳が2本置いてある。期限が短いからと半額になっていた。それを私が見ているのに気付いたのか、伊吹はそれも一緒にレジに持って行った。
「ありがとうございました〜!お大事に〜!」
「俺このコーヒー牛乳好きなんだよなぁ〜…甘くて!」
伊吹が甘いもの好きなのが少し意外だった。逆に苦手だと思ってたから。
「てっきりブラックコーヒーとかの方が好きだと思ってた…」
「やっぱりそー見えんのか?よく言われんだよな…俺苦ぇのダメだからブラックとかぜってー無理なのに…」
伊吹のことは自分とはかけ離れた存在だと思っていたけど、急に凄い親近感を憶えた。なんだ、結局普通の人間じゃないか。そんな事を考えながら歩いている内に、伊吹の家についた。小さめのエレベーターがついた小綺麗なマンション。オートロック付きだが殺人鬼が中に住んでる状態で意味はあるのだろうか。
「さー、着いたぞ!すげぇ散らかってるけど許せよなー!…やっべ、エアコン付けっぱだった…」
伊吹は荷物を置き、キッチンの水道でササッと手を洗った。一応石鹸は置いてあるが、使っていないようだった。私が手を洗っていると、伊吹が後ろから急に抱きついてきた。
「手ぇ洗う時肩から動いてんの、すげぇ可愛いなぁ」
とても愛おしそうに、私の左肩に頬ずりしている。ふわふわとしたオーラで、すごく幸せそうだ。
「外暑かったから、いっぱい汗かいちゃったね…」
「あー…一緒に風呂入っか!?タオルこれ使え!」
伊吹が私にぽいっとバスタオルとフェイスタオルを投げて来た。水色のバスタオルは伊吹とお揃い、薄いピンク色のフェイスタオルは端に小さくどこかの旅館の名前と電話番号が書いてある。
用意しろって事なのだろうか、洗面所のドアを閉められた。服も脱ぎ、パジャマも用意できた頃
「おーい!入っていいか?」
伊吹の声が聞こえた。いいよ〜 と言いながらドアを開けたその時
「は!?おい!!お前!!!タオル巻かねぇのかよ!?!?」
伊吹は酷く混乱しているようだ。確かに私は今全裸。家族関係じゃ無い成人男性の前で、女子中学生がしていい格好では無いだろう。私はバスタオルを巻くという発想にならなくて、そのまま何も隠さず伊吹と会ってしまった。
「菜白が恥ずかしくねぇなら別に隠さなくてもいいんだけどな…?俺は隠すか…」
「別に隠さなくていいよ?どうせたたないのに。」
ついストレートに言ってしまった。尊厳をかなり傷つけてしまったかもしれない。でも伊吹はDesire様としてインタビューを受けた時に「殺人以外じゃ全く興奮しない」って宣言してたし間違ってはいない…はず。
「そうだけどさぁ…初対面の男の股間なんざ見たかねぇだろ?」
欲を言えば伊吹の出来るだけ沢山のこと、沢山の所を知りたい。でも股間を見たいとは言い辛い…。
「ははっ、なんだよその顔…まさか見てぇのか?はーっ…とんだ破廉恥娘じゃねぇか全く!」
伊吹も鏡に写った私もお互いに満更でもないような顔をしている。
「…おい…それ…傷…どう…した…?」
伊吹が不安気な表情をしている。視線の先は…私の腕、大体浅い物だが無数の自傷痕が残っている。
「あっ…こんなの見せちゃって…ごめ」
急に伊吹がしっかりと抱きしめてきた。
「…ったく。謝んなくていーんだ…この量の傷…ずっと1人で耐えてきたんだろ?これからは1人じゃねぇ、俺がついてるから安心しな…!」
「えへへ…ありがと…いぶき…だーいすきだよ…っ!」
私も負けじと抱き締め返す。お互いの肌が触れ合って、相手の体温がよく分かる。優しく私を安心させてくれる伊吹の体はとても暖かかった。
「はははっ…いーかげん風呂入るか!菜白お前頭洗えるか?」
「ふぇぇっ!?あっ、洗えるに決まってるじゃん!!もう!」
急な不意打ちを食らって、ついキツく返してしまった。
2人とも一通り体を洗い、湯船に入った。2人とも体がそんなに小さい訳では無い。1つの浴槽に1度に2人で入るには少し狭いが、それもまた嬉しい。湯船の中で伊吹に抱きつこうとしたが、拒否されてしまった。伊吹曰く リラックスしてつい寝てしまいそうだからダメ らしい。お風呂上がり、櫛がないことを思い出した。
「ん?菜白…あー、クシ忘れたんだな?目ぇ荒いのでいーなら一応あるけどこれ使うか?買ったけどあんま使ってねぇんだよなぁ…」
貸してもらった櫛で髪をといていたら、伊吹に突然ドライヤーで髪を乾かされ始めた。多分初めてやるからだろう、慣れない手つきで優しく優しく髪を乾かしている。
「伊吹、大丈夫だよ!いつも自分でやってるし…」
「くそー…髪ちゃんと乾かすの…難しいな。もっとやり方調べるか〜!」
伊吹はそう言いながら冷蔵庫の方に向かった。何かお風呂上がりのデザートを探しているのだろうか?一瞬冷蔵庫の中に見えた肉塊と思しき物は見なかった事にする事にした…。