創作 破滅の望(仮)

一次創作「破滅の望(仮称)」のまとめ。※グロ描写、多少の工口描写を含みます。

破滅の望 6話

「菜白〜!お前バニラ味のアイスって食うか?」
「食べるよ〜!…貰っていいの?」
数分冷蔵庫を物色していたが、最終的に冷凍庫に入っていたアイスに決めたようだ。
「俺チョコだけでいーんだけどさぁ…大箱限定なんだよなー…」
確かにこのアイスのチョコ味単品って見た事がない、人気の味をファミリーパック限定にする戦略なのだろうか。そういえば私はこの後どうなるんだろう、このまま何事も無く寝るのだろうか。
「ん〜?早く食わねぇと溶けちまうぞ?」
「あっ!い、いただきます!!」
その頃もう伊吹はほとんど食べ終わっていたので、私も慌てて口の中に放り込んだ。今少しでも喋ろうとしたらむせてしまいそうだ。
「そういや俺ん家、客用の布団とか無ぇなー…」
解決策なら直ぐに思いついたが 一緒に寝たい、なんて簡単に言えることではない。
「んー?一緒に寝っか!なーんつって。ふつーに考えたらやだよなぁ、こんな頭イカれたカニバ男と一緒に寝るとか…」
すぐに反論したいが生憎口の中をアイスに占拠されてしまっていて話すことが出来ない。急いでアイスを無理矢理飲み込むと頭が少しキーンとした。
「嫌じゃないよ!?私は元々伊吹の事…だ、だぁーい好きだったしっ…!!!…うぅ…恥ずかしい…」
うわあああ!言ってしまった!!恥ずかしい!忘れて!忘れて!!…そんな思いも虚しく
「そーっかぁー!菜白はそーんなに俺の事好きなんだなぁ!!はははっ!添い寝するか!」
伊吹はわしゃわしゃと私のまだ少し濡れた頭を豪快に撫でる。私はすかさず濡れたであろう伊吹の手を拭いた。
「あぁ、ありがとーな。んで添い寝…ほんとにいーのか?食われちまうかもしんねーんだぞ?」
「えへへ、いいよ。…どっちの意味でも」
一緒に寝る、ってそういう事だろう、問題は伊吹は添い寝とかじゃ全くたたない事だ。
「いやまぁカニバ問題は家来た時点でアウトみてぇなもんだけどさ…せーてきな意味での方は…その…」
1日に2度も現実を突きつけるのは流石に酷だろう。だから黙ってる。申し訳なさそうな顔をする伊吹にそっと視線を送る、分かっているよ と。…こっちの方が残酷かもしれない。その場で棒立ちのままどっちの方がよかったのか考えていると、寝室…と思しき部屋から声が聞こえた。
「さぁ!菜白〜!寝るぞー!」
部屋に向かうとベッドに寝転がった伊吹が掛け布団を持ち上げて私が入るスペースを用意してくれていた。さぁ来い、と言わんばかりの表情でこっちを見ている。ゆっくりと布団に入ると伊吹が私を抱き締め、優しく背中を撫で始めた。
「かわいいなぁ…菜白…俺に会おうって思ってくれてありがとーなぁ…」
満足気な声でそう話した。いつの間にか腕枕されている。目を合わせるのが恥ずかしくなって、少し布団に潜った。するとなんとおでこにキスをしてきたのだ!
「わっ!?なっ、なに…?!」
「ッははは!可愛いしいー匂いだなぁーって。つい、なっ。」
石鹸の匂いだろうか、子供の匂い ってやつなのか?それとも…美味しそうって事なのかもしれない。でもそれより私は伊吹が全く私を食べたそうな素振りを見せない事の方が気になっていた。自分の信者なんて、食料にするにはうってつけだろうに。まだ人肉は残っているから要らないのか、非常食にでもする気なのか。あまりにも気になり過ぎたので聞いてみる事にした。
「ねぇ、伊吹?…その…んぐぅ!?」
突然キスで口を塞がれてしまった。でも5秒も続かないで終わった。質問を防ぐ事だけが目的だったのだろうか?酷く恥ずかしそうな顔をしている。
「はーっ…ごめん…な…?せーてきなもん何もしねーと思ってた男に無理矢理ちゅーされるとか…嫌だっただろーに…」
全く嫌じゃなかったしむしろ嬉しかった。大好きな人とキス出来る…しかも大好きな人からしてもらえるなんて夢のようだから…。Desire様とならなんだってしたいのだ。
「ねぇ伊吹?よければ…その…そういうこと…したい…な…って…」
「あー…本番?今はゴムねーからダメ…だな。ほんとにしてーなら今度一緒に買いに行こーな。」
どうやら避妊してくれるらしい、かなり意外だ。…でも女性経験等が全く無く学校で言われた避妊しましょうをちゃんと守っていると考えたらおかしくは無い。じゃあなんで人殺すのかって話だがそこに触れるのは野暮ってものだろう。
「今から買いに行ってもいーけど…お前もう疲れてんだろ?コンビニでもそこそこ距離あるしな…。」
そっか、この辺りは治安も悪い。こんな時間に外に何か買い物に行くのは得策では無いだろう。そろそろ眠くなってきたので寝ることにした。今日…いや、昨日は色々あったなぁ。時刻は0時30分を指していた。
「おやすみ、いぶき……。すぅ…すぅ…」
「ん?もう寝るのか…?もうちょっと起きて俺と…って菜白?菜白ー!?チッ…寝んのはえーなおい…明日コイツ何時に起きっか分かんねーな。まぁいっか。おやすみ、菜白。」