創作 破滅の望(仮)

一次創作「破滅の望(仮称)」のまとめ。※グロ描写、多少の工口描写を含みます。

破滅の望 14話

つい私が作るなんて言っちゃったけど、上手く作れる自信はない。伊吹は凄い喜んでくれてるけど、あんまり美味しくないの出しちゃったらどうしよう。
「えっと…冷蔵庫開けていい?」
「お前ほんと礼儀いーよなー。菜白はもう俺の特別っつーか家族みてーなもんだ、開けていーに決まってんだろ?」
ありがと、て言ってから冷蔵庫を開けた。私が伊吹の特別、家族みたい…か。まだなんだか伊吹…Desire様に相応しいと思えない、自分なんかって思っちゃう。
「なー菜白?何作んだ?」
うわびっくりした!いつの間にか伊吹が背後に居た。気配も足音も全く無くて、冷蔵庫見ながらボーッとしてたらそこに居た。
「ッははは!どーだ、怖かったか?」
私が驚いて硬直しているのを見ると、嬉しそうにニヤッと笑っていた。よく見ると鋭い八重歯が覗いている。包丁持ってこんな顔されたら普通の人はきっと怖くて逃げ出せないと思うから、もはやちょっと嬉しいのは私が普通じゃないって事なんだろう。たとえ少し恐ろしくても、伊吹の嬉しそうな顔なんて私が嫌いな訳が無い。包丁…今気になる事が1つ思い浮かんだ。
「伊吹は人殺す時に包丁使ってるけど、料理する時に包丁持っても殺したいってならないの?」
「なんねーな、殺す用と料理用は分けてっから。殺す用のやつ持ったら…はははっ、これ以上は辞めとくか。」
そう言って伊吹は不敵な笑みを浮かべていた。包丁は用途によって形状も変わるし、そりゃ分けてるか。というか本当に何作ろう、何もアイデアが思い浮かばない。
「作ってくれんだったら唐揚げとか食いてーかなー…!」
私がメニューに悩んでいるのを察したのか、伊吹からリクエストしてくれた。わかったって返事してから思い出した。唐揚げって普通なら中身は大体鶏肉にするけど、生憎ここに鶏肉は無さそうだ。人肉って鶏肉には近くないって何処かで見たけど、頑張れば代用できるかな。でも勝手にやって失敗するのも怖いや。
「ねぇ伊吹、唐揚げの中身どうしよう。」
「ん?あーなるほど、鶏肉とか俺ん家ねーもんなー。まー人肉で多分どーにかなると思うぞ、一緒に作るか!」
伊吹はにっこりと笑って、ぽんぽんと私の背中を優しく叩いてくれた。さすがDesire様、食べ慣れてる人の発言の信用度はすごい。私がその場で突っ立ってる内に、伊吹は材料を次々と準備していた。今作るって決めたところだけど、油も道具も偶然今家にあるやつで足りそうらしい。これももしかしたら殺人鬼の勘ってやつなのだろうか?
「多分材料は足りると思うが、俺唐揚げの作り方とか知らねーんだよな。菜白は知って…知らなそーだな、調べるか。」
私もしかして頭使ってなさそうな顔してた?もしそうだったらすごい恥ずかしいな。確かに私は唐揚げの作り方は知らないし、わざわざ知らないって言わなくていいからちょっと楽かも。でも伊吹と喋るチャンスが少しでも減ってるなら凄く勿体ないな。
「あ、ありがと!わざわざ調べさせてごめんね?」
「謝んなよなー!菜白なーんも悪くねーんだからよー。えーっと?この調味料を混ぜ…分っかんね!」
スマホに映ったレシピを覗き込み、伊吹は怪訝な顔をしている。確かにちょっとだけ分かりにくい表記になっている。
「ニンニクと生姜と醤油と…へー、ごま油入れるんだ!」
私の家…いや、実家で作ってた時はごま油は入れてなかったから、ちょっと意外だった。確かに美味しく出来そう。
「あー、これそーいう事か。酒ってみりんでいーのか?」
「ううん、多分だめだと思う。料理酒ってある?」
ここに書いてある酒はみりんとは別物、料理酒とか日本酒とかのことだろう。みりんって甘くなりがちだし。
「そっかー、んじゃ材料足んねーな。何かまたいる時あるかもしんねーし、今から買いに行くか!」
そう言うと伊吹はササッと材料をしまって、洗面所に向かった。買い物に行く準備のようだ。私も急いで伊吹を追いかけた。