創作 破滅の望(仮)

一次創作「破滅の望(仮称)」のまとめ。※グロ描写、多少の工口描写を含みます。

破滅の望 10話

「おはよー!いぶき…?!」
時刻は7時30分、夜更かししたせいかいつもより寝すぎてしまった。そういえばこれから学校はどうなるのだろうか?それより私は隣に伊吹の姿が無い事の方が気になっていた。今日は伊吹の仕事は休みのはずなのにこんな早く起きてるのかな。もしかしたらもうリビングにいるのかもしれない、そう思ってリビングに向かった。
「おぉ、おはよ。菜白。お前寝ぼけ顔かわいーな」
「おはよ、伊吹!寝ぼけてなかったら可愛くない?」
よかった、ここに居た。部屋にはパンの焼けたいい匂いが立ち込めている。安心してちょっと意地悪な質問をしてしまった。そういえば伊吹は人殺しに行った時のままの服で寝ていたはずだけど、もう着替えていた。あと今になってトイレに行ってる可能性もあった事に気づいたが、今更どうでもいい。
「っははは!寝ぼけてなくてもかわいーに決まってんだろ?お前が大好きなDesire様の大事な人なんだ、もっと自信持っていーんだぞ!」
朝から恥ずかしい思いをしてしまった。言い終わった伊吹も頬を赤く染めている。こんなに相手に可愛い可愛いとか言ってる人が夜中に人殺して食べる為に解体してるなんて嘘のようだ。
「あー、菜白!朝飯出来てんぞ。ほんとはお前も起きた後に作ろーと思ってたんだけどな…待たせてもわりーと思って先作ってたんだよ。心配させてたんならごめんな?」
なんで置いて行ったのとか言おうかと思ったが、私の為に朝ごはんを作ってくれる為だったなんて聞いてからそんな事言える程鬼畜ではない。何か自分に出来る事が無いかと考えている内に、伊吹が作ってくれた朝ごはんが机に並んでいた。トースト、サラダ、ハンバーグ。昨日帰りに買っていたコーヒー牛乳もある。ハンバーグの肉の正体は聞かないのが吉だろう。
「いやー、久しぶりに朝からこんなん作ったな。基本1人じゃ自分の為にしか作らねーからさ?…まぁ自炊しねー人も多いだろーけど俺は食材が…な。」
確かに余程料理が好きでも無い限り、一人暮らしで朝からこんなに豪華に作らないと思う。食材が特殊でもなかったら…。
「いただきまーす!」
どれから食べようか?やっぱりサラダだと思うけどハンバーグも冷めちゃう前に食べたい。悩んだ末結局食べたい時に食べたい物を食べる頭使わない方法に辿り着いた。結局これが1番かもしれない。いつも通りのペースで食べていると、気づいたら伊吹は食べ終わっていた。アイスといい今といい、ちゃんと噛んで食べてなさそうな勢いだ。待たせては悪い、そう思ってペースを上げていると、それに気づかれたのだろうか。
「焦んなくていーぞ、ゆっくり食いな。」
穏やかな笑顔でそう言われた。ほんとに伊吹は勘が鋭いってレベルじゃない気がする。
「ご馳走様でした!」
食べ終わったが…結局あれから20分ぐらいかかってしまった。皿洗いはやろうかと思っていたが、私が食べている間にほとんど終わっていた。せめて自分の分だけでもやらないとな…あっ。食べ終わったお皿とカトラリーが回収されてしまった。ここからどのタイミングで自分で洗うよって言おうか。
「あの…伊吹!お皿洗うよ…?」
「んー?ッはは!もうほぼ終わってっから今はいーぞ。どーしてもって言うなら…昼飯の時やってくれっか?」
わかった、と返事をしてソファに戻った。ぼんやりと朝のニュース番組を見ていると、お皿を洗い終えた伊吹が隣に座り、肩を抱き寄せてきた。暖かい…落ち着く…伊吹に体重を少しだけかけたその時、伊吹に引き倒されてしまった。膝枕されて、じーっと見下ろされている。
「伊吹…今日学校どうしよう…。」
時計は8時15分、いつもなら学校についてなきゃいけない時間だ。それに今日は平日、休む連絡の手段もない。
「学校?行きてーのか?見てる限り学校も大分辛そーだが…」
「でも!…」
行かなきゃいけない。辛くても逃げちゃいけない。学校は行くのが当たり前。
「行くな、俺の…Desireからの命令だ。菜白の事を思って〜とかめんどくせー事言うつもりはねーよ。無理矢理行こーとしよーもんなら縛り付けて監禁してでも止める。…分かったか?」
今まで柔らかかった伊吹の表情が突然恐ろしい…人間を襲う捕食者のような顔へと変貌した。光の無い目で私をじっと捉えて離さない。体が震えて言い返す事も出来ない…。伊吹に今まで襲われた人達もこんな感覚だったんだろうか?でも伊吹は人を殺す時は欲情しているはず。
「はははッ!怖かったか?ごめんな。でも俺はあーしてでも菜白にしんどい学校行かねーでほしーんだよ。菜白にだけは…これ以上辛ぇ思いして欲しくねーのもあるけどな。」
そう言いながらぎゅーっと抱き締めてくれた。優しくて暖かい、大好きな人の手…恥ずかしくて伊吹には絶対言えないや。私にだけは?伊吹も学校で何かあったのかな。
「伊吹は…学校、辛かったの?」
「あぁ。昔俺も虐められててな…」
俺も って、私が虐められてて辛いのはバレてしまったみたいだ。
「だーいぶ長くなるけど…聞くか?」
聞きたいと答えると、伊吹はゆっくりと話し始めた。