創作 破滅の望(仮)

一次創作「破滅の望(仮称)」のまとめ。※グロ描写、多少の工口描写を含みます。

破滅の望 3話

殺人鬼の勘…か。一緒に暮らしたいなんてとんでもない事を当てておきながら、あっけらかんとしている彼をじーっと見つめてみる。乱雑に切られ裾の揃わない緑がかった銀髪、人が死ぬ…殺される瞬間を沢山見てきた 引き込まれるような緑色をした瞳。よく見ないと気付かないような女性のような喉仏、胸辺りまで下がる透き通った明るい水色の石のネックレス。
「あー、これか?これが何なのか…知りたい?」
ネックレスを眺めているのがバレて、そう聞かれた。彼の恐ろしい過去には似合わないような綺麗なネックレス、確かに不思議に思っていたので聞いてみる事にした。
「俺いろいろやらかしたからここから監視されてる……」
それを聞いて私は息を飲んだ。それが本当なら、私が彼に会った事が家族や警察に見つかってしまう。
「なーんて事は無くてあそこにあった宝石屋の閉店セールで安くなってんの見かけたから買ったんだよ。このサイズで600円だぜ!?そりゃ買うだろ!何の石か知らねーけど…。俺こういう色好きなんだよなぁ〜、ほんとはもうちょい緑っぽい方がいいけど!」
彼は少し遠くを指さしながらそう話した。閉まったシャッターに「テナント募集中」と書かれた紙が貼られている。監視されてる ってのがハッタリだと分かってほっとして、つい言ってしまった。
「Desire様!怖い嘘つかないでくださいよ!もし警察にバレたら私は家に帰されちゃう…やだ…」
「すまねぇ!俺が悪かった…よしよし…てかお前マジで家で何されてたんだ?」
彼は慌てて私をギューッと抱き締めてそう言った。控えめに言って気絶しそうだ。大好きなDesire様に抱きしめて貰えて今最高に幸せなのに、家で今まで言われてきた事がフラッシュバックして意識が朦朧とする。
「っ!?お前!!どーした!?」
「やなこと…思い出し…て…ごめんなさい…ごめんなさい…」
またこれだ。どんなに幸せでも家に帰ればまた不幸が訪れる、そんな感覚で過去の記憶が大量に蘇ってきて涙が止まらなくなる。
「もう自分責めんな…?落ち着くまで泣いていい…それまで俺は待っといてやるからさ。」
守るように私を抱きしめ、ゆっくりと背中を撫でながらそう言った。
10分近く経っただろうか。メンタルが落ち着き、また幸せを感じられるようになった。
「もう大丈夫…!ありがとうございます」
「こっちこそありがとな!逃げ出そうとしない生きた人間抱きしめたの、初めてかもなぁ…」
一瞬「生きた人間」という言葉が引っかかったが彼は殺人鬼だという事を思い出して納得した。最初は彼の猟奇的な部分から好きになったのに、あまりにも優しくしてもらって忘れていた。
「あとお前敬語じゃなくていーぞ?てか名前何だ?ずっと「お前」っつってんのもアレだしな。」
急に敬語じゃなくていいと言われてフリーズしてしまった。もしかして彼は本当に私とずっと一緒に居てくれる気なのだろうか?そんな考え過ぎな願望が脳裏を過った。あと名前…これから名前で呼んでくれるのかもしれない…!!
「私は…菜白…花畑菜白!」
「菜白ちゃんかぁ…可愛い名前じゃねーかっ!あと花畑…って…なぁ菜白?父ちゃんの名前、秋人だったりする?」
私が自分の更生係をしていた者の娘である可能性に気付いたのだろうか。花畑秋人はお父さんの名前だ。
「うん、お父さんは花畑秋人。Desire様の更生係してた。」
嫌われるかもしれないが今更隠すのも厳しいだろう、そう思って明かすことにした。
「ほーぅ…アイツの子が俺の事好きとか意外だったが…家に帰りたくないっての納得だな!アレが家に居たらって考えたらゾッとするな。よく逃げ出して来れたな…!」
彼は頼もしい笑顔でそう言った。逃げ出すも何も、最後は引き止められもしなかったが…。