創作 破滅の望(仮)

一次創作「破滅の望(仮称)」のまとめ。※グロ描写、多少の工口描写を含みます。

破滅の望 2話

居場所がバレないようにスマホの地図は使えない。家で写した手書きの地図を頼りに歩いていると、ちょっと治安の悪い繁華街に出た。下品な程の極彩色のネオンの看板、露出度の高い片言の日本語の客引き達。どう見ても子供が1人で来る場所では無い雰囲気を放っていた。初めて現実で見る景色を目に焼き付けながら歩いていると、このタイミング繁華街には似つかわしくない薄暗い裏路地への入り口を見つけた。丁度目も耳も疲れて来ていたので、入ってみる事にした。誰も居ないと思っていたが奥へ奥へと歩みを進める内に、突き当たりに誰か居る事に気が付いた。不思議な…不気味なオーラを纏った人、性別も分からない。結構離れてはいたが、一瞬目が合ってしまった。こうなってしまったらもう引き返す事は出来ない。覚悟を決めて、その人の方へと進んだ。
「…ん?お前…1人か?こんなトコの夜に…」
少し驚いたようにその人…彼は言った。どうやら男性のようだ。
「はい…ひとり…です。あ…えと…」
私は人を探している と言おうとしたが、パッと言葉に出来なかった。次に何を言うかも何も考えていなかったせいで黙り込んでいると、彼はニヤリと笑ってこう言った。
「はははっ!こんな時は嘘でも親と一緒って言わなきゃ危ねーぞ?お前ほんとに1人みたいだし…もーちょっと周り警戒しねーと…」
…確かにそうだ。1人でいるなんて誘拐してくださいみたいなもの…なんてぼんやり考えていると、彼はおもむろにポケットから包丁を取り出した次の瞬間
「カンタンに殺されちまうぞ?!俺みてーな食人鬼にな…ッ!!」
その包丁を高く振り上げたのだ。命の危機の筈なのに、何故か全く怖くなかった。
「…は?もーちょいビビると思ったんだがなー…」
彼は包丁をポケットに仕舞い、残念そうに言った。その表情はまるで「人を残酷に殺す事に快楽を憶える者」のようだった。…もしかして
「んー?なんだ?俺の顔、なんかついてるか?それともつーほーする為に覚えようとしてんのか?」
「あの…この紙に「ディザイア」って書いて貰えますか?」
本人に「DesireCatastropheですか?」と聞くのは流石に嫌われるリスクが高そうだから辞めておいた。
「えーっ…もしや俺が何者か分かってる?」
ついギクッとしてしまった。正体を察している事は確実にバレてしまっただろう…
「じゃあこんな回りくどいことしねーで聞きゃよかったのに…まー怖がんのも分かるけどさ?」
紙に書くのは慣れないのか、ゆっくりとペンを進めながらそう聞いてきた。
「怖がってないです!…ただ…嫌われたくなくて…」
私が彼を…Desire様を怖がる?そんな事ある訳が無い。
「嫌われたくない…ふーん…別に俺恨んだ相手殺してる訳じゃねーんだけどなー…あっ、書けたぞ。」
恨まれたくない訳でも無い事を釈明しようかとも思ったが、渡されたその紙に書かれたサインに引き寄せられてしまった。ギリギリ読めるくらいの雑な字で書かれた「DesireCatastrophe」の文字。広めに開いた字間とギチギチの行間、正真正銘Desire様のサインだ。
「お前…なるほどなァ…あー…」
私が狂信者である事を察したのだろうか。全く…と言わんばかりの表情で私を見下ろしている。「ごめんなさい」と言おうとしたその時 私の口を抑え
「ッ…はははッ!謝んなくていーんだよ!ってかお前何されて来たんだよ…」
彼は私の頭に手を近づける。無意識に叩かれるんじゃないかと思ってしまい、その場で少し縮こまった。
「…!! 叩くと思ったのか!?んな事する訳ねーだろ…?」
なんと彼は私の頭を優しく撫で始めたのだ。あまりの展開に精神がついて行かず、ただ黙って撫でられる事しか出来ない。
「…かわいーなぁ…ずっとこうしてたい…でも殺すのはなんか違ぇんだよなー…何なんだろ…」
何とか状況は理解したが、ふにゃふにゃとしたやる気のない声しか出ない。
「でぃざいあさま…まっ…て…」
「どーした?なんか言いてー事でもあんのか?」
一緒に暮らしたい…それが私の本音だが、Desire様にとって私は初対面の狂人…そんな図々しい事を言うのは良くないだろう。
「遠慮すんなよー?何となく何言いてぇか、結構分かってんだぞ?…ずーっと一緒に居てぇんだな?」
完璧に図星だ。当てられた衝撃で、文字に出来ないような情けない声がでた。
「なんで…わかったん…です…か…?」
全然体に力が入らず、文章に出来てもサラッと話せない。
「なんでわかったのか?俺の…殺人鬼のカン、舐めんじゃねーぞっ!」